日本でもさまざまな神話が根付いているように、ハワイにもたくさんの神話が存在しています。
ハワイ神話に出てくる神々を把握しておくことで、観光スポットに訪れたり、お土産を買ったりするときの時間がさらに楽しくなります。ハワイの文化を深く理解したい方にも、神々の存在を知ることは役に立つはずです。
今回は、ハワイ神話に登場する神々の概要やエピソード、豆知識などをご紹介します。ハワイに訪れる予定がある方は、ぜひ事前にチェックしてみてくださいね!
ハワイの神話に登場するカーネ(Kāne)とは?

まずは、カーネ(Kāne)の概要とエピソード、豆知識などについてご紹介していきます!
カーネの概要
カーネは、ハワイ神話における生命の神です。ニュージーランドではタネと呼ばれています。
四大神のリーダー的存在として知られており、神々が住む「上の天」「下の天」、人間が楽園として住む「地上」を創造しました。人間の祖先であり、太陽や水など森羅万象を司る存在とのことです。
天界の神(カーネ・ワヒラン)、石の神(カーネ・ポハク)、土地の神(カーネ・ル・ホヌア)など、さまざまな呼び名があります。
カーネの化身として雷の神(カーネ・ヘキリ)もあり、カメハメハ大王に滅ぼされたマウイ島のカヘキリ王は、自分がカーネ・ヘキリの子孫だと信じていたとのことです。
カーネのエピソード
遠い昔のハワイは暗闇に包まれており、天国も地球も生物も存在しませんでした。その中でたった1人存在していたのがカーネです。光が差し込みカナロア、クー、ロノの3人の神々が現れ、カーネに加わります。
カーネは海からヒョウタンを拾いました。上半分を投げると空になり、下半分は大地になります。ヒョウタンの2つの欠片から太陽と月も生まれ、種が夜空に星として散らばりました。
カーネが地上の生き物を創造し、カナロアが海の生物、クーが森の木々、ロノが植物を創造したとのことです。
カーネに関する豆知識
ハワイにはティキという木彫りの像を置く文化があります。昔のハワイでは、神様を木彫りの像で表現して、ヘイアウと呼ばれる神殿に祀る文化がありました。
しかし、四大神のリーダーとされるカーネだけは、姿を表現することを畏れられ、木彫りの像は造られなかったとのことです。
そのため、自然に存在している石がカーネとして見立てられています。
そのほか、ハワイにおいて「カーネ」という言葉には男性という意味もあり、妻の立場から見て夫や夫の兄弟をカーネと呼ぶようです。男性用トイレでは、実際にKāneという表記が施されています。
ハワイの神話に登場するカナロア(Kanaloa)とは?

前章のご説明で少し登場したカナロア(Kanaloa)も、ハワイ神話では有名な神様として知られています。引き続きカナロアの概要やエピソード、豆知識についてご紹介していきます!
カナロアの概要
カナロアは、ハワイ神話における四大神に含まれる海神です。
イカやタコなどの姿で現され、黄泉の国や漁業、航海などの神として位置づけられています。クック諸島ではコインのデザインにもなっています。
ハワイの創世神話「クムリポ」では、変な臭いがするヘエ(イカ)と表現されていました。古代ハワイにおいてヘエは病気を追い払う存在として信じられており、カフナといわれる治療儀式で使われていました。
18世紀末にハワイでキリスト教が布教され始めると、黄泉の国を司るカナロアは悪魔と認識されるようになったようです。
カナロアのエピソード
カナロアは、カーネと一緒にハワイ全土を旅していたという伝承があり、それぞれの島に両者の神話が根付いています。
カナロアとカーネは、カヴァ酒(カヴァの木の根を砕いて作る飲み物)を好んでいましたが、お酒を造るには水が必要でした。
旅の途中、両者は美しいマノアの谷で、カヴァの根を見つけます。カナロアは水がないことを嘆きましたが、カーネは強靭な杖で丘の斜面を叩いて岩盤を割り、冷たい水を湧き出させました。
両者はお酒を造って泉の横で楽しんだといいます。この泉はカヴァイアケアクア(神の水)と呼ばれており、18世紀にオアフ島に滞在していたカメハメハ大王も水を飲んだといわれています。
カナロアに関する豆知識
カナロアのイメージは、ほかの神々の描写とは似ておらず、丸い眼によって表現されているようです。
丸い眼の模様は、生命の蜘蛛の巣をあらわすとの見方もあり、ハワイ語でkiとして知られる聖なるエネルギーを放射しているとのことです。
シンボルのエネルギーは、癒しや精神的機能の促進など、さまざまな目的に活用され、手や指をあてると流れや冷感などとして感じられるといわれています。
ハワイの神話に登場するクー(Kū)とは?

四大神には森の木々を創造したといわれるクー(Kū)もいました。次はクーの概要やエピソード、豆知識について解説していきます!
クーの概要
クーは戦いや森、農耕、漁労などの神に大きく分類され、各分野でさらに細かい神に化身しているといわれています。
ハワイのネイティブの学者であるサミュエル・カマカウは、クーを29種類に分類したとのことです。
たとえば、戦いのクーに関しては「大地を治めるクー」や「助けてくれるクー」などのように分けられます。
特に有名なのが「土地を奪うクー(クー・カイリモク)」であり、カメハメハ大王が奉っていたとのことです。
クーのエピソード
クーがハワイに現れたときは空に雷鳴がとどろきましたが、人間の姿で小さな村を訪れたので、神様だと気づかれませんでした。
農民の1人として働き始めますが、体が大きくて力も強かったことから、村で尊敬を集めました。村で結婚して子供がたくさん生まれましたが、雨が降らない日々が続き、村が飢饉に見舞われます。
クーは庭に出て地中に沈み、頭のてっぺんしか見えなくなりました。家族が涙の雨を降らせると、クーが消えた場所から緑の芽が出て、ウルの実がなったのです。
クーの妻が幹の周りに生えている若芽を村人達に配ったところ、村中でウルの木が成長しました。その後、ウルの木によって村が飢饉に見舞われることはなくなったとのことです。
このような神話から、ハワイではウルの木がクーの化身として認知されています。
クーの豆知識
戦いの神として有名なクーは、生贄が必要なタイプのヘイアウ(祭祀場)に祀られました。
ハワイのお土産屋さんで見かけるティキのほとんどはクーをイメージして彫られているといわれています。クーのティキは真っ直ぐに立って口を大きく開け、少し怖い表情をしています。
クーは物騒なイメージを持っているように思えるかもしれませんが、別の捉え方もなされています。
たとえば、漁師が崇めるクウラという神もクーの仲間とのことです。人間の姿をしていたときは東マウイに住み、ハワイにたくさんある養魚池のうち最初の池を作ったといわれています。
クウラはコアという漁のための祭祀場に祀られており、数はハワイ全体で数千か所にのぼるとのことです。
ハワイの神話に登場するロノ(Lono)とは?

最後にご紹介する四大伸は、植物を創造したといわれるロノ(Lono)。キャプテンクックに関するエピソードが特に印象的です。ロノの概要やエピソード、豆知識について解説していきます!
ロノの概要
ロノは雨や癒し、豊穣、平和、愛などを司る四大神です。たとえば、ロノの化身の1つは豚だったとされています。豚が豊穣の象徴をあらわしていたのかもしれません。
古代ハワイでは、毎年10月あるいは11月からの4か月間にわたって、ロノを祀るマカヒキと呼ばれるお祭りが開催されました。
人々はゲームやスポーツなどを楽しんでいたといいます。重労働や宗教儀式、戦争などから解放されるため、庶民にとってはゆっくり過ごせるひと時だったようです。
ロノは、マカヒキのときにロノマクアと呼ばれる模型で象徴されていました。長い木を組み合わせてTの字を作り、中心にロノをイメージした顔がつけられたといいます。
特に象徴的だったのが大きな白い布。帆の形はロノマクアと似ていたため、キャプテンクックがハワイ島を訪れたとき、ロノ神に間違われて住民から崇められてしまったようです。
ロノのエピソード
天上に住んでいたロノは地上に降り立ち、ハワイ島ワイピオ渓谷の美女カイキラニと幸せに暮らし始めました。しかし、妻が浮気をしていると誤解をしたロノは、カイキラニを殺してしまいます。
死の間際に誤解していたことに気づいたロノは、悲しみの末にマカヒキの祭りを創設しました。そしていつかハワイに戻るという言葉を残して、カヌーでハワイを去ったとのことです。
この神話によりキャプテンクックは、ロノ神だと誤解されてしまったのかもしれません。
クックが損傷した船を修理するために島に戻ると、神の船が壊れることがないと勘づいたハワイアンは態度を豹変させます。最終的にハワイ島のケアラケクアの湾の対岸で、クックは殺害されてしまったのです。
ロノの豆知識
オアフ島のマカハ渓谷には、ロノを祀ったカネアキ・ヘイアウがあります。豊かな緑に囲まれ、近くにマカハビーチもあり、自然に恵まれたエリアにあります。
15世紀から16世紀頃に建てられたといわれ、2つの塔や神像、小屋などが残っており、オアフ島内でも特に復元状態のよいヘイアウとのことです。
歴史の一説では、カメハメハ大王がカウアイ島を侵略しようとしていたときに、戦いの神であるクーを祀り、生贄を捧げていたこともあるようです。
住宅地の中にあることから、訪れるためには管理ゲートで通行許可をもらう必要があります。ヘイアウに向かいたいことを告げて、国際免許証とレンタカーの契約書を提示するだけで通れるようです。
そのほか、ロノを祀ったヘイアウとして、オアフ島のワイメア渓谷にハレ・オ・ロノ・ヘイアウもあります。ロノの家という名前がつけられており、パフと呼ばれる神聖な太鼓も保存されているとのことです。
ワイメア渓谷オーデュボン・センターの入口駐車場付近で祀られているので、ハワイの古代文化を体感したい方は立ち寄ってみてはいかがでしょう。
ハワイの神話に登場するヒナ(Hina)とは?

ここまで四大神を紹介しましたが、ハワイに女神はいないのか、気になった方もいるのではないでしょうか。
ハワイには四大神以外にも神々が存在しており、ヒナ(Hina)という女神も有名です。続いて、ヒナの概要やエピソード、豆知識を解説していきます!
ヒナの概要
ヒナは、ハワイをはじめタヒチやそのほかの地域の神話に登場する女神です。古代太平洋エリアにおいて女性や母の象徴とされていました。
ハワイ神話の古典的書物を残したマーサ・ベックウィズは、女性のヒナを男性の象徴であるクーと同列に扱い、五大神のように記述したようです
ヒナに関してはさまざまな神話があり、月や海に関する内容が多いです。月を意味するハワイ語としてmahina(マヒナ)があり、ヒナに関係しているという見方もあります。
ハワイの書店では、ヒナが主人公の絵本も複数あり、ヒナの伝説を知ることができます。神話が好きな方であれば、ハワイを訪れたときのお土産として検討してみるとよいかもしれませんね。
ヒナのエピソード
ヒナに関して有名なのが月に関するエピソードです。ヒナは、不幸な家庭で苦しい生活を余儀なくされていました。
得意のカパ布作りは、ワケアの木の皮を水につけて叩き伸ばす作業であり、重労働です。夫は自分勝手で何も手伝わず、食事の支度が遅れるとヒナを怒鳴るのでした。
ヒナが「どこか遠くに行って1人で休みたい」とつぶやくと、美しい虹が天上へ続くアーチを描きます。
ヒナは天上に登ろうとしますが、太陽の灼熱に耐えられなくなり、最終的に地上に戻ることになりました。
地上に戻って夫に怒鳴られると、その晩に再び家出をしてしまいます。すると今度は、夜空に虹が輝いていることに気づきます。
虹を登り始めたヒナは、星たちに助けられながら月にたどり着くことができたのです。不遇な生活を送っていたヒナは、ようやく月で平和に暮らせるようになりました。
このようなエピソードから、ヒナが月の女神として知られているようです。
ヒナの豆知識
ヒナがレインボーフォールズの大きな溶岩洞窟に住んでいたという神話もあります。巨大なトカゲがヒナの生活を邪魔していましたが、息子のマウイによってレインボーフォールズのうえで倒されたとのことです。
神話に登場したレインボーフォールズは、ハワイの定番観光スポットとして有名になっています。場所はヒロの街から車で10分ほどのワイルク川州立公園の中です。落差は24m、滝壺は直径30mであり、水量が最大になる雨季には激流が見られます。
名前にある通り滝に虹がかかることで知られているほか、きれいな花が咲いていて癒されると評判です。ハワイを訪れたとき、気持ちをリフレッシュさせたい方は、観光してみてはいかがでしょうか。
ハワイ神話に登場する下位の神々

ハワイ神話では、ここまで紹介した以外にも下位に位置づけられるさまざまな神々が登場します。下位の神々といえども概要を知っておけば、観光スポットを訪れたり現地の文化に触れたりするとき、楽しみ方が増えるはずです。
引き続き、ハワイ神話に登場する下位の神々についてご紹介します。
ペレ
ペレは、タヒチからハワイに渡り、キラウエア火山に住みついたといわれる女神です。一説によると、姉であるナマカオカハイ(海の女神)の夫を誘惑したことによる仲違いで、故郷を追われたといわれています。
永遠の炎を燃やし続けるための深い穴を必要とし、オアフ島やモロカイ島、マウイ島などの島々を渡り、穴を掘り続けたとのことです。しかし、ナマカオカハイが執拗に追いかけ、穴を海水で満たしてしまうのでした。
ペレが掘った巨大な穴は各島にあり、オアフ島にあるダイヤモンドヘッドもそのうちの一つとのことです。
ラカ
ハワイといえばフラですが、フラの守護神として知られているのがラカという女神です。
周囲に生命力をもたらすヒーリングパワーを宿しているといわれ、癒しをもたらす幸福の女神としても崇拝されています。
ハワイの島々では男性と女性の2人の踊る神がいましたが、男性は島から姿を消してラカだけが残ったとのことです。ラカが自分の踊りをハワイで教えることを決意して、最終的にフラが誕生したといわれています。
別の一説では、ラカがヒイアカという女神に踊りを教えて、ヒイアカがペレの前で踊っていたとのことです。そのため、フラは3人の女神に関する物語を表現していたのではないかという見方もあります。
気になった方は、現地で神話とフラダンスに詳しい方に聞いてみてはいかがでしょう。
カマプアア
カマプアアは、豚やイノシシの神であり、多くの神話で下品な乱暴者として表現されています。
オアフ島で女神ペレと妹のカポが旅をしているときのことでした。カマプアアはペレに一目ぼれしてしまい声をかけます。
カポは執拗に迫るカマプアアからペレを守るために、なんと自分の身体から女性器を外して投げたのです。
カマプアアが女性器に気を取られたおかげで、ペレとカポは逃げ切ることができました。美しいプルメリアの林で知られる植物園があるココ・クレーターは、カポが投げた女性器が元になっているとのことです。
まとめ

今回は、ハワイ神話に登場する神々についてご紹介しました。
ハワイ神話ではたくさんの神々が存在しており、さまざまなエピソードや豆知識などがありました。
今回ご紹介した神々について簡単にまとめてみますね!
【カーネ】
四大神のリーダー的存在。人間が楽園として住む地上を創造した。ハワイにおいて男性という意味を持つ言葉になっている。
【カナロア】
イカやタコといった姿で現され、黄泉の国や漁業、航海などの神として位置づけられている四大神。カーネと一緒に旅をしてお酒を楽しんでいた。
【クー】
戦いや森、農耕、漁労などの神として知られる四大神。人々を飢饉から救ったウルの木がクーの化身として認知されている。
【ロノ】
雨や癒し、豊穣、平和、愛などを司る四大神。ロノを祀るお祭りをマカヒキという。キャプテンクックがロノと勘違いされて殺害されてしまった。
【ヒナ】
古代太平洋エリアにおいて女性や母の象徴とされていた月の女神。五大神に含まれるという記述もある。貧しい暮らしから離れるために月に移り住んだというエピソードが有名。
【ペレ】
海の女神に追われキラウエア火山に住み着いた女神。永遠の炎を燃やし続けるために深い穴を掘った。ダイヤモンドヘッドもその名残りだといわれている。
【ラカ】
フラの守護神であるとともに癒しをもたらす幸福の女神。ヒイアカという女神に踊りを教えて、ヒイアカがペレの前で踊っていたといわれている。
【カマプアア】
ハワイ神話で下品な乱暴者として表現される豚やイノシシの神。ペレに一目ぼれして逃げられたときのエピソードが、ココ・クレーターの地に関係しているという。
今回ご紹介した神々は以上です。
今回すべてはご紹介できませんでしたが、ハワイ神話には他にも神々がたくさんいます。歴史的な観点からハワイの魅力を深堀りしたい方は、ぜひご自身でも調べてみてくださいね!